TEENSの飯島です。お仕事体験の新プログラム「Kaien義塾」についてご紹介です。
お仕事体験とは、当社が独自に開発している発達障害のお子さんのためのキャリア教育プログラムです。このプログラムの中では、教室は「職場」となり、子供たちは「社員」として、「上司」や「先輩社員」であるスタッフから指示を受けながら「業務」となる課題を進めていきます。
業務内容は経理部、人事部、カフェなど多岐にわたり、それぞれのプログラムでねらいが異なります。例えば人事部のプログラムでは、採用業務を通して「会社が求める人物像」を理解できるようなプログラムになっています。
参考: TEENSのお仕事体験 、「人の振り見て我が振り直そうプログラム『人事部』」からの考察
今回ご紹介するKaien義塾では、子どもたちには塾の先生として、生徒の答案の採点と間違い直しをしてもらいます。この時、基本的には解答は見ずに自力で間違いを見つけ、正答を書き、どこがどう間違っていたのかを上司に報告してもらいます。
ここでアセスメントできるのが、「正確に見直しができるか?」という点です。例えば、算数の文章題で計算の間違い(例:3+6=8)には気がつくことはできても、式の立て方の間違い(例:リンゴが3つあります。みかんが2つあります。あわせて何個? 3+4=7)に気が付けないお子さんが少なからずいます。このケースの場合、計算の仕方はわかっていても、文章題を読み飛ばしてしまったり、文章の意味理解に苦手さが見られる、といった傾向があることがわかります。
発達障害のあるお子さんは、見直しを苦手とする子が多いです。理由は様々で、文章を読むことの負担感が強く2回読むのが難しい子や、ポイントとなる部分だけざっと捉えていくといった効率よく情報を獲得していくのが苦手な子、間違いを見つけることへの恐怖心から一度解いた問題は見たくもない、という子もいます。このプログラムではどういった場合に間違いを見落としやすいのか自覚してもらうとともに、見直しすることでで解消できる可能性がある間違いを客観視することで、チェック作業の重要性について認識してもらえるような内容になっています。
参考:お仕事体験とは
生徒の答案のなかには、問題だけでなく「お悩み相談」のコーナーがあり、子どもたちにはそちらにも答えてもらいます(赤ペン先生をイメージしてみました!)
お悩みの内容は「勉強へのやる気がおきないのですがどうすればいいですか?」「学校の休み時間にひとりになってしまうことが多いです。どうすればいいですか?」などなど…。子どもたちが日常的にぶつかる可能性があるようなものになっています。
こういった悩みに対して、ご家族や学校の先生、TEENSのスタッフからもアドバイスを受けることが多い彼らですが、それだけでは”知っている”だけで”理解している”とは言えません。自分の言葉でアウトプットできるようになって初めて、実感と行動へと繋がっていきます。
さらにさらに、Kaien義塾のプログラムの中では「人を褒める練習」もできるようになっています。
社交辞令を言わない実直さは彼らの大きな魅力なので、お世辞が言えるようになってほしいということでははありません。ここで目指しているのは、結果ではなく経過を評価するということを知ってもらうことです。
特に小学生くらいのお子さんの場合に多いのですが、答案の誤答をみたときに「こんな簡単な問題を間違えてんのかよ~!」と言ったりします。そんなお子さんが、いざ自分が勉強した時に間違いを指摘されるを受けると大きく落ち込んだりパニックを起こしてしまうことがあり、そういう時に「よく頑張っていたから大丈夫だよ」なんて言葉は届きません。
自他の境界があいまいな発達段階のお子さんにとって、他人への厳しさは自分へと返ってきやすくなります。逆に言えば、他人に許容できたことは自分の弱みを受け入れることにつながっていきます。自分の弱みを見つめるのは誰にとっても苦しいものです。このプログラムでは、自分と似た弱みをもつ他人と向き合うことで、自己受容の最初のステップを踏めるようにしています。
「答えはおしかったけど、式はあっていましたよ。頑張りましたね」なんて言葉が子どもたちから聞こえたら成功です。一方的に評価を受ける経験の多い子どもたちに、人を上手に評価していく機会を与えていくことはとても重要です。
かなりこだわって作ったプログラムだったため、ついつい長くなってしまいました…。
お仕事体験プログラムは、TEENSだけでなくパートナーシップ加盟事業所でもお受けいただくことができます。現在、全国に5カ所あるので、ご利用希望の方はぜひお近くの事業所にお問合せください。
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*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます