TEENSの森谷です。発達障害専門塾『まなびTEENS』の現場からお伝えします。
少し前のプログラムになりますが、まなびTEENSの授業中に『耳をすませば』というシリーズに取り組んでいました。これは「口頭で言われたことを耳で聞き取り、問題に答える」というシリーズでした。
面談で保護者の方からよくお聞きするのが「うちの子、人の話を全然聞けなくって」「聞いてるふりはするんですけど、言われたことが分かっていないんです」というお話。聴覚情報からの指示理解、内容理解に関するお悩みです。果たしてお子さん達は「聞けない」のか? 「聞いても分かっていない」のか? 今回は”聞く”ということに関して、躓きが見られた一例についてご紹介します。
まなびTEENSセッション内での一幕です。お喋りが得意で、一見口頭でのコミュニケーションに課題はなさそうに見えます。しかし「お返事がとってもよいのに実はよくわかっていなかった」といった具合に、学校生活の中でも困り感が見えてきたタイプのお子さんです。
いくつかの絵が上下左右に並んでいるシートをお子さんと一緒に見ながら、スタッフが尋ねました。
「りんごの上は何番ですか?」
「①番です」
「正解。では、りんごのお隣りは、何番ですか?」
するとお子さんはきょとんとしています。
「となり?」
「そう、隣り。りんごはここだね、隣りには何て書いてあるかな?」
りんごのイラストを指しつつ、重ねて尋ねても首をひねっています。
「となり…?全部となりだよ?」
さて、このお子さん。どうして”隣り”の意味が分からなかったのでしょうか?もちろん隣りという言葉を知らないわけでもなく、隣りという言葉を使ったことがないわけでもありません。 このお子さんは”隣り”=近くにあるもの、として捉えていました。
もちろん、これは間違いではありません。正解です。辞書での意味のひとつに「並んで続いているもののうち、最も近くにあること。」ともあります。どの数字も、リンゴのあるマスに隣接していることには間違いがなく、そういう意味では疑問を覚えられたことの方が適切であるともいえます。
「となりと言われれば横の位置を示すのでは?」といった”一般的な言葉の使い方”の理解がある、あるいは「①は上と呼んでいた。ではとなりと言われたら?」というように類推する力があれば今回の問題は難なく解くことができました。が、言語の理解が固定的なものにとどまってしまうと、こういった誤解が生じます。
このように発達障害*のあるお子さんは一般的に言う『常識』、つまり「いつの間にかどこかで手に入れている知識」を取りこぼしていることがあります。話す側は『常識』を前提に話しているけれど、受け手のお子さんにはそれが無いということが起こりえます。音としては聞こえているけれど、言葉と意味とが正確に結びつかずイメージが出来ない、なので結果として内容を取り違えている、ということはよくあります。
復唱してもらう(音として聞けたか)、自分の言葉で説明してもらうとお子さんごとの課題は浮き上がってくるでしょう。そのうえで、言葉とイメージが結び付くような働きかけ(体現する、使用する状況のパターンを伝える)をしてあげると”使える語彙”を育んでいくことができます。
小学生から高校生まで利用することができる少人数制の発達障害専門塾まなびTEENS。こちらでは30人クラスの中ではなかな見切れない根本部分の課題に対して丁寧に向き合っていきます。
火曜・水曜に体験セッションを受け付けております!ご興味のある方はお気軽にご参加ください。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます