発達障害のあるお子様向け キャリアデザイン教育
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発達障害のあるお子さんの進学先について考える ~シリーズ① 中学受験~

進路 2015年8月7日

TEENS御茶ノ水の大橋です。

TEENSでは9月6日(日)に、第一回「発達凸凹があるお子さんのための合同学校説明会」を実施しますが、なんと申込開始後2日で満席となりました。予想以上の人気ぶりに、改めて関心の高さや、「我が子にあった進学先を探したい」という保護者様の強い思いを感じているところです。それを受けて今回から、4回シリーズで「発達障害*のあるお子さんの進学先について考える」というテーマで書いていきたいと思います。1回目は「中学受験」という選択についてです。

「中学受験率」は首都圏では約20%程、つまり小学生の5人に1人が中学受験をしている計算です。東京に限れば約30%程となります。首都圏での中学受験という選択はそこそこメジャーであると言えます(ちなみに私の地元は栃木県ですが、周りで中学受験をした友達は一人もいませんでした。大学で首都圏に出てきて初めて「中学受験」という存在を知り、未知の文化に衝撃を受けた記憶があります)。

中学受験を経て進学する「私立中高一貫校」の中身は学校によって様々なので、その分メリットも様々です。例えば、お子さんが興味のある分野について存分に学べる環境がある、面倒見(「理解出来るまで帰しません」、「成績不振者には卒業生を家庭教師として派遣します」、という超面倒見派の学校もありますし、逆に超自由派の学校もあります)、校風、クラブ活動(野球部が強い、鉄道研究会があるなど)、附属の大学までエスカレーター式に上がれる、体験学習や海外研修が充実している、などです。TEENSに通うお子さんでも、中学受験をしているお子さんが少なからずいます。

中学受験を経て上記のようなメリットを受けることが出来ますが、当然受験勉強をして合格を勝ち取る必要があります。大手中学受験塾では、概ねどこも4年生から中学受験に向けたカリキュラムがスタートしますが、内容は小学校で学習するレベルを大きく超えます。ですので中学受験をするためには、一定以上の学力、20~30人の集団・クラスの中で学んでいける集団力、勉強のために遊びやゲームを我慢できる忍耐力、そして何より「その学校に入学してやりたいことがある」という高いモチベーションが必要になります。どれも障害の有無に関わらず中々大変なものです。また中学受験の場合面接を実施する学校はかなり少なく、試験の点数のみで合否が決まる学校が多いです。コミュニケーションや社会性に苦手さのある発達凸凹のお子さんにとって、そこは若干安心できる点かもしれません。
また一つ注意してほしいのは「中学受験偏差値」です。例えば「偏差値40の学校」と聞いた場合、「そんなに頑張って勉強しなくても入れるんじゃないの」と思われる方もいるかもしれません。しかし中学受験をする20%の小学生というのは、学力的に上位のお子さんであることが多いです。「レベルの高い集団の中での偏差40」というのは、決して甘い数字ではないのです。実際中学受験偏差40という学校でも、高校受験偏差値は55~60、ということも普通です。

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また、実際中学受験をして進学しているTEENSのお子さんの様子を見ると、うまく適応出来ているお子さんももちろんいますが、やはり学校生活や学習面で苦労しているお子さんの方が多いように感じます。私立中高一貫校は大学進学を前提としていますし、かつ高校2年までで大学入試に必要な内容を一通り終えるカリキュラムを取っているので、進度も速ければ学習レベルもやはり高く、課題も多いのです。学習レベルの高さについていけなくなったり、また学習面以外の部分で悩みを抱えていたり、というお子さんがTEENSにも少なからずいます。

正直なところ、私立中高一貫校の場合、発達凸凹のお子さんへの配慮を行っていると明言している学校はほとんどありません。つまり多くの学校では、発達凸凹のあるお子さんが入学してくることを基本的には前提としていないのです。ただもちろん、その中でも出来る限りのサポートをしてくれる中高一貫校もありますので、気になる学校については個別相談等で、サポート体制やカウンセラーの勤務状況などについて聞いてみるのがよいでしょう(上記のように試験の点数のみで合否が決まる学校が多いため、当然ですがそれで不利になることはありません)。

中学受験という選択についてまとめると、発達凸凹を持つ全てのお子さんにお勧めできるものではない、と言えると思います。上記でも述べましたが、一定以上の学力、集団授業についていける力、忍耐力、高いモチベーションなどが必要になってくるためです。しかしながら、目標に向けて努力をすることで計画・段取り力や身に付けることも出来ますし、精一杯努力出来た・合格出来た、という経験が本人の自尊心や自信を高める大きな材料にもなるでしょう。

中学受験をする場合には、入学後に「こんなはずではなかった」とならないためにも、気になる学校については事前にサポート体制について聞くことをお勧めします。また入学してみたもののやはり合わない、という場合には、無理に頑張らせず転校を考えるのも一つの有効な手段です。実際中学受験をしたTEENSのお子さんで、高校進学後に通信制高校へ転校したことでかなり安定した、というケースもありました。

次回は、通信制高校・通信制サポート校という選択について、書いていきたいと思います。

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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