TEENSの飯島です。
先週、東洋経済オンラインの記事が話題になっていました。
【早稲田政経卒「発達障害」26歳男が訴える不条理】 「高学歴なのになぜバカなんだ?」と罵倒される#東洋経済オンラインhttps://t.co/hjHFk7F8cu
— 東洋経済オンライン (@Toyokeizai) August 25, 2020
「高学歴なのに発達障害という点で理解が得られず、福祉の谷間に落ちた感覚」という言葉があまりに生々しい…
ソウスケさん(仮)26歳
性格は内向的。学生時代からクラスで孤立しがち
「これ、十分ありえることだよなあ…」というのが最初の感想でした。
そんなわけで、例えばこの方が10代のうちに診断を受けてTEENSが出会えていたら?というのを勝手な妄想を綴っていきます。
長々書きますが、結論としては『(ソウスケさん自身も含めて)ソウスケさん理解者をつくっていこう!』です。
なんらかのきっかけがあって、診断を受けて、TEENSに繋がったとして。
それでも、このお父様の場合は「もっと頑張れるはず。普通になれるはず」という考えに苛まれそうです。そしてそのプレッシャーで苦しむソウスケさん。板ばさみになるお母様…。
特にソウスケさんの場合、早稲田大に進学できるくらい賢く、また性格も内向的なので周囲を”困らせる”障害ではなかったのだと想像できます。「まさかうちの子が!」となってもおかしくない。ご家族が混乱するのも無理はありません。
こんな場合。まずお母様を労いたいです。医療機関に繋がって、支援機関を探して、というのは結構なエネルギーを使います。よくぞ来てくれました!!とお伝えしたい。
その上で今後について相談します。お父様からのプレッシャーがご本人にとって悪影響になりそうであればやはりお父様へのアプローチを考えた方が良さそうです。
医療機関に一緒に行って医師から説明を受けるとか。TEENSの面談にいらしてもらってスタッフから説明をするとか。
決してご本人が怠けているわけでもなく、発達障害*は恥ずかしいことでもない。
多数派向けにつくられた社会の中では生きづらい部分もあるから、サポートが必要なんですよ、ご本人の強い部分を伸ばしていきましょう、というメッセージを時間をかけて繰り返しお伝えしていきます。
きっと一回では腑に落ちません…少しずつたゆまなく働きかけていくイメージですね。
それくらい、家族が味方であると子ども自身が実感できるかどうか、はとてもとても重要です。
「クラスメートと好きな小説や漫画の話をしても、おもしろいと思うポイントがずれる。「お前、おかしいんじゃない?」などと言われ、クラスでも孤立しがちだった」という高校時代。
好きなこともある。得意な教科の勉強もあったソウスケさん。ご本人は「内向的」と表現されていましたが、真面目な良い子だったんだろうな…と思いはせます。TEENS生にも多いタイプです。
賢い方です。できることはたくさんあります。一方で人を上手に頼るのは苦手そうです。
【個別セッション】の中で、対話をとおして自分の困り感を整理していきながら、それを補っていくための方法を一緒に考えていく時間をとります。
自分の得意なこと。
工夫すれば解決できそうなことがあること。
特性上どうしても難しく配慮を求めたいことがあること。
同じように悩んだりチャレンジしている仲間がいること。
学校の中では縮こまってしまって得られない刺激を受けながら、自己への理解を深め自尊心を養っていくための働きかけが必要です。それがないと人を上手に頼ることができません。
ここで培ったものは生涯を通じた財産になっていきますし、逆に学生時代からこの部分が損なわれていると大人になってから苦労します。
数学の点数が低くて「怠慢だ。真面目にやらないと将来苦労するぞ」と先生から叱責を受けるソウスケさん
(障害の有無に関わらずこの言い方はNGでしょうに…)
努力不足ではなく、特性から数学の特定分野はどんなに努力しても難しいことを学校にも説明する必要がありそうです。
もし学校から理解をえることが難しくご本人が追い詰められる状況になりそうであれば、TEENSから働きかけて先生に間接支援を行っていくケースもあります。
ですが、基本的には本人を飛び越えて大人だけで話すのではなく、ソウスケさん自身から説明できるようサポートできるのが理想ですね。
自分の強み弱みを伝えて必要な配慮を求める力、セルフアドボカシー。大人になっても必須です。
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ではTEENSがソウスケさんの思春期時代に出会えたとして…将来像はどのように変わっていたでしょうか?
おそらく新卒後の就職までのストーリーはそれほど変わらなさそうです。大学進学、一般枠就職。誇れる力を最大限活かすことを応援したいです。
問題はその後。もし、やっぱり難しい、苦しいとなったときに。
お父様もソウスケさんの頑張りを理解している状態で、ソウスケさん自身も「配慮のある環境では等身大の力を発揮できる」という経験に基づいた自信があれば、もう少しうまいこと軌道修正してほどひどい二次障害に陥らずに済んだ可能性は高かったでしょう。
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(本当は障害年金のこととか他にも色々気になるケースですが、割愛)
小学生時代に、「周囲を困らせる行動」がなくなるとそこで療育が終了してしまうケースが現状は多いです。
ですが、将来のために本当に必要な自己理解やセルフアドボカシーの力は思春期年代に養っていくものです。
思春期時代のサポートが実践できる場所って本当に少ないので、高校通級や放デイなど…未来にむけたサポートを受けられる場所が増えていくといいなと思いますし、私たちもパートナーの輪を広げていかねばなあと改めて実感しました。
発達障害の子どもたちの10年後の未来を明るく!思春期のTEENSプログラム
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます