森谷 行事も充実しているとお伺いしていますが、どんな方針でどんな内容の行事があるのでしょうか?
長谷川先生 はい、本校の全日コースや全日ITコースでは、「研修・行事」をたくさん実施しています。集団生活が苦手な生徒が多いので、縦や横のつながりができるような機会を増やせるよう工夫しています。
例えば、1年生は入学式が終わった後、クラス毎に、オリエンテーションの研修にいきます。九十九里のほうに研修施設を所有しているので、そこの施設に行くんです。そこの施設にはキャンプ場も併設してあります。キャンプ研修では、テントの張り方、薪の割り方、火の起こし方…たくさんの共同作業を通じてコミュニケーションの機会を増やしていきます。2年生になると北海道の函館にスキーに行ったりとか、3年生は海外研修でハワイに行きます。中学のときにこういう経験ができなかった生徒がたくさんいますから、高校に入って楽しい思い出がたくさんできるといいな、と思っていまして。
森谷 生徒たちにとっては特別な経験になりますね。
長谷川先生 そうですね。高校生になったら、やり方さえ間違えなければ勉強については徐々に身についていきます。でも、こういう経験は自分一人ではできませんから。
他の高校生が経験できないようなことを積み重ねていったら、卒業式には知っている・できるの数が他の高校に通っている生徒たちよりも両手いっぱいになります。それでこの学校に通ってよかったな、ってなってくれたら私たちとしても教師冥利につきます。
勉強だけではなく、生徒たちの人生を包括して考えるようにしています。中学のとき、行きたくても行けなかった、行っても楽しい思いはできなかったという生徒はたくさんいますから。じゃあ高校で巻き返そうよ、もっともっと楽しい経験を積んで、自慢できるような3年間にしようよ、と。
森谷 なるほど。一方で、こういう活動は苦手な子もいませんか?
長谷川先生 もちろん、います。そういう子たちには強制するようなことはしませんね。機会はたくさんありますから、どれかひとつでも興味をもって参加出来たら素敵だね、というスタンスでいます。無理矢理連れていくのではなくて、どれかには参加したいと思ってもらえるようにチャンスをたくさん用意するようにしています。
過保護に考えるなら、「やりたくないならやらなくていいよ」で済ましてしまうこともできます。でも、それでは教育ではないんですよね。そこで終わってしまえば排除に繋がってしまう。どうする?どんな風になってみたい?と地道に問いかけていくといけるなら行きたい、という生徒は多い。そういう生徒のためにも、チャンスは多いほうがいいと考えています。
森谷 研修行事の内容は毎年決まっているのでしょうか?
長谷川先生 それも、参加する学年の傾向を見ながら調整しています。
例えば、以前はEnglish villageという名前の宿泊型イベントを行いました。アメリカ人の先生をお呼びして、二泊三日、ノージャパニーズで英語だけで生活するんです。
趣旨としては、日本語だとコミュニケーションの得意不得意がでますが、英語だとみんな難しいですよね。条件がそろってくるんです。身振り手振りで、ジェスチャーに頼るしかなくなる。そうすると、日ごろコミュニケーションが苦手な子でも同じ条件で楽しんで参加したりできるんですよ。これは一昨年まで3年連続で実施しました。
森谷 去年はちがったということですかね?
長谷川先生 去年の学年は、逆にそういう行事は引いちゃうようなタイプの生徒が多かったので、あえて変えたんです。でも英語の要素はいれたかったので各グループに1人留学生をいれて、浅草や上野をガイドをするようにしました。異文化交流の要素はいれつつも、心理的な負荷が少ない形で参加できるようにと考えまして。
あくまで教育なので、結果が伴っていないと意味がないですから。だから、”旅行”ではなく”研修”という言葉っています。当然やるからには楽しいほうがいいですが、あくまで授業の一環として後に何が残るかというのは強く意識しています。逆に言えば、学びがあるような内容であればやり方に固執する必要はないと思っているんですよ。学年のカラーやニーズに合わせて柔軟にカスタマイズできるようにしています。
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