TEENSの飯島です。昨日は島根県教育委員会が主催する特別支援教育研修会で、松江市の幼稚園・小・中学校、高校、県立特別支援学校の先生方に向けて講演をしてまいりました。今回はその内容について少し触れていきたいと思います。
今回、「将来を見据えた発達障害児の教育・支援」というテーマで100分ほどお話させていただきました。平日にも関わらず80名以上の先生が参加。島根県の教育への熱量の高さに驚いております。
講演のご依頼をいただいたとき、長年先生として勤められていらした教育事務所のスタッフの方から、こんなお話をいただきました。
『教員は数年間の子どもたちの姿しか見ることができません。そしてどうしてもその数年間のことしか、考えていないことが多いのが現状です。しかし、支援の必要な子どもたちは特に、その在籍の数年だけを考えて育ててはいけないのではないか、と思っています。次の学校にどのように支援をつないでいくか、どのような成長の姿を想像して今を育てていくのか、自立していくためにはどんなことが今は必要なのか等、未来を見据えながら教育していくことも大切ではないかと思います。
私たち教員は、特に学校卒業後のこと、就労のこと等詳しく分かってはいません。就労支援を行っておられる中で、教職員に向けて知ってもらいたいこと、自立に向けてやっておかなければならないこと等をお話ししていただけませんか』
発達障害*のお子さんへのキャリア教育の必要性が凝縮されているようなお言葉に感激してしまいましたが、本当におっしゃる通りで、その子が今だけではなく将来的にできそうなこと、したいことであるか、そしてそれを叶えられる環境があるかを考えながら、その子のためにデザインされた教育・サポートをしていく必要性があります。
数字からもわかりますが…発達障害のお子さんは、就職・就労の部分で躓くことが少なくありません。そのため今回は、将来につながる「はたらく力」の育成がとても重要ですよね、ということをお伝えさせていただきました。
「いくら注意しても言うことを聞いてくれない」…最後の質疑応答のお時間にいただいたお悩みのひとつです。子どもたちのための目標は個別にデザインされたものであってほしい…とはいえ学校の中ではたくさんのルールがあり、そこへの適応を促すことも必要な指導です。成功体験を積ませてあげたい、褒めてあげたいと思っていても、ルールから逸脱している場合に、注意を重ねてしまうこともあるでしょう。
そのとき私からは「注意をするのは100回褒めてからにしてください」とお伝えをしました。ルールに則って行動している他の生徒さんの中でそれを行うのが難しいのはよくわかります。ですが、心に余裕がないときに、注意の言葉は耳には届きません。また、自分の価値を信じてくれていなさそうに見える人からの指摘というのは受け入れにくいものです。
特に発達障害のあるお子さんにとっては、暗黙のルールへの理解が難しいのです。正解が分からないまま不適切な行動をして注意を受けてしまうこともままあるでしょう。「こうすればいいんだよ」という正解を示す意味でも、まずは100回、よい行動を見つけて褒めてあげてほしいです。
(とはいえ…TEENSは実社会に近い疑似社会的な環境を用意しようとはしていますが、発達障害への理解がある大人しかいません。なので多様な人がいる学校社会の中での対応は、比にならないくらい大変なことだとは重々理解しています。先生個人に負担がかからないよう、教育・福祉・地域が連携していかれるようにしなければなりませんね)
Kaien/TEENSでは啓蒙活動・支援者教育にも力を入れており、「発達障害」「就労」「教育」といったキーワードをもとに研修や講演を行っています。
自治体や教育委員会、学校、PTA、親の会などが主催する研修会など、ご希望があれば全国各地に赴きます。
ご希望の方はこちらをご参照ください。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます