発達障害のあるお子様向け キャリアデザイン教育
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千葉県松戸市 「興学社高等学院」| 発達障害に理解のある学校 インタビュー特集 vol.004

場面緘黙のある生徒の成長 専門的技術をもちながらも頭でっかちにはならずに

大橋 では、生徒さんの成長エピソードで印象に残っているものを教えていただけますか?

佐藤先生 本当にいろんな生徒がいますけれども、…例えば、緘黙のお子さんの例を出しますね。

興学社高等学院の中には場面緘黙の子がいますが、スモールステップで自信がつくようなやりとりをしていきます。細かい支援スキルはもちろんあり、本当に専門的なものなので知識的なものを学んだうえで身につけていかなければいけないんですが、頭でっかちになってはいけなくて。人と人として向き合っているんだということは忘れずに接していくのが結果を左右すると考えています。

結局、こっちが緘黙を直そうとして話しかけてるな、とその子に思われた瞬間、シャットアウトですから。そうじゃなくて、人として、その子の見えない部分を聞きたいんだ、知りたいんだという、本能的な面で話かけないといけない。そうでないと、下心があると一瞬でバレますね。子供達には。本当に素直なので。

あるお子さんの例でいうと、SSTの一環として行っている「オープンキャンパスのお手伝い」の中で、自己紹介をする機会があるのですが。前に立つだけでもいい、おじぎだけでもいいと思って送り出したところ、大勢の前で話ができたんです。その時私は、「おぉっ!」とね。見えない努力が花開いたというか…。それをきっかけに、日常生活でも同級生の前でも話すようになりまして。今3年生なんですけど、面接練習なんかもできるようになりました。お母さんの前ではまだ少し恥ずかしがっていますけど、別人のように生まれ変わって送り出すことができたんだなー、というエピソードがありますね。

「うちに来たらまずSOSの出し方を教えました。何か辛いとか思ったら、まず相談しろよと言っています」

大橋 それはその子の人生が変わりましたね。大和先生はいかがですか?

大和先生 私は担任をした、アスペルガー傾向の子が印象に残っています。

アンガーマネージメントが難しい子で、中学時代はトラブル続きで。うちに入学してからも、ちょっと嫌なことがあると逃げ出したり、SNSとかで攻撃しちゃったり。友達もなかなかできない状態でした。

なので、最初の2カ月くらいは、まず私が一緒にお昼食べて、二人でゆっくり趣味の話をしたりするところから始めました。それでその子への理解を深めて、相性の良さそうな子と繋げていったところ、ある日気づくと、グループの子で話してるんですよ。「あれ、友達できたの」と聞くと、「できたよ」って。僕は背中を押しただけですが、本人の中にあった力を引き出すことはできたかなと思います。

で、その子の中学の先生にもお会いしたこともあるのですが、「あの子、変な子でしょ、大変でしょ」っていうんです。僕は「そんなことないですよ」って言ったんです。「うちでは普通に友達作れてますし」って。

その時ちょっと思ったのは、先生から変な子って思われてたら何の手の差し伸べようもなくて、本人が、どんなSOSも多分出せなかったと思うんです。なので、うちに来たらまずSOSの出し方を教えましたし、何か辛いとか思ったら、まず相談しろよと言っています。本人も少しずつ自分の苦手を自覚するようになって、自分はそれを克服しないと社会に出られないんだな、と葛藤できるくらいに成長しました。

今が人生で一番楽しい―― 辛い思い出を乗り越えて、スピーチで共感を呼ぶ子

大橋 ありがとうございます。窪田先生はいかがでしょう?

窪田先生 では、最後に。ある男の子で、中学時代にいじめられたり、例えば学校で盗難事件があると疑われたり、やれ体育祭の練習を休めばクラスメイトから喜ばれ…というような、なかなか苦しい環境下にいた子なんですが。

でも、本当はすごく素直ないい子ですよね。発達障がいで行動や言葉遣いが他の子と違う、ということだけでそんな目にあっていて。その子が中学時代、担任の先生から「お前は将来犯罪者になるぞ」って言われたそうなんです。その子はそれがとどめとなって、不登校になってしまいました。

興学社高等学院に進学した後は、困ったことがあっても周りに上手に相談しながら日々を順調に過ごしていました。で、「スピーチテクニック」という授業の中で、中学時代の辛いエピソードを話したんです。みんなの前で立って、堂々と。

大橋 その、つらい経験を乗り越えて…

窪田先生 親御さんは絶句ですけど、子どもたちは不思議と共感してましたね。あるある、そういうの、みたいな。そういう辛い思いをしてきた子でも、その思いを共有できる仲間を見つけられたんだな、というのにはホッとしました。その子は今が人生で一番楽しい、言っていますね。

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