大橋 通信と通学のコースがふたつあると思いますが、違いは何ですか?
雨宮先生 不登校を長年経験したこの中には、自分はちゃんと通えるのか?という不安がある子が多いので、もし通えなくても家で勉強できる、という道もあるよ、という安心材料のために通信制コースは設けています。実際に利用している生徒もいます。
でも、少しずつ機会を見つけて学校に来てもらえるようには働きかけつつ、どちらのコースも行き来できるようにしているんです。できれば通学に繋げていって、3年後の自立にさらに繋げていきたいという考えではあります。
大橋 他には大学部もあるようですが、そこではどんな取り組みをされていますか?
雨宮先生 高等教育機関としての大学ではないのですが、高校を卒業しても社会に出る自信がない、という子が数名はいますので。そういう子たちにために、卒業後通える場所を確保しようと大学部を作りました。一緒にアルバイトやボランティアなどしながら外にでる練習をしていきます。
大橋 自立・巣立ちを最後までサポートする、と。
雨宮先生 子どもたちには、卒業するときに「30歳までは面倒見るから、何かあったら来なさい」と伝えているんです。なので、卒業後も子どもはフラっと相談に来ますね。進学後のこととか、仕事のこととか。彼らの頼れる居場所であり続けることで、彼らの気持ちが少しは楽になればといいなと思います。
大橋 卒業後の進路についてお聞かせください。
雨宮先生 最終的には大学3割、専門学校7割くらいで、進学が多いです。将来を見据えて大学ではなく専門学校を選ぶ子が増えてきていますね。
大橋 子どもたちが自分で進路選択をするにあたり工夫していることはありますか?
雨宮先生 まず、親子の進路説明会を、2年生の終わりにやります。そのあと色々具体的に調べていくんです。6月くらいになるとオープンキャンパスが始まるので、あまり進路について決まっていなくても見に行き始めます。特に夏休みは徹底的に回りますね。できれば9月、遅くても11月には方向性が定まるようにサポートしていきます。
これほど世の中に情報が溢れていても、じゃあ世の中にどんな仕事があるか、っていうのはわかっていないんです。だからどんな仕事をしろって考えろと言われても土台無理なんですよ。僕たち大人にだってわからないくらい、職業が多様化している時代ですから。
なので、進路指導を通して将来に向けた選択肢を知ったり、自分のできること・したいことと向き合っていきます。面接指導するときに、なんでこの学校受けるのか?とか問答するなかで子どもたちが「やっぱり違っていた」とかっていって考え直したりとかもします。
行動していくことが重要ですよね。面談はもちろんしますし、資料請求を一緒にやったりとかもします。そうやって具体的にさしていかないと、子どもたちも考えられない。「どこに行くの?」っていうだけじゃ進路指導にはなりませんから。
大橋 なるほど。そういった中で子どもたちも自分で考えていく力が育まれていくわけですね。保護者の方とはどのように連携しているのでしょうか?
雨宮先生 保護者の方には、子どもたち本人が相談してきたらそれには是非のってほしいけど、将来の仕事をどうするかは言わないで、将来の仕事と進路は結びつけないで、と話しています。
ITは盛んで食うには困らないから、とか。大人が言い始めちゃうと子どもたちの自己決定の機会を奪うことになってしまいますよね。
大人からしてみれば、わけのわかんない学科を選ぼうとすると、親は「食えるの?」となかなってしまう。でも、通いだしたらいろんな人との出会いがあって仕事ともかならず出会えるから。だから本人が「通える・通いたい」と思えることが何より大事なんです。僕たちも、ここならいけそうだね、というところなら背中を押す。学力だけじゃなく、その子にとっていけそうな環境かどうかを重視します。本人が頑張れれば自ずと道はできていきますから。
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