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「発達障害の就労の最新事情 2018 」というタイトルで保護者会を開催します。Kaien / TEENSを利用されていない方も参加可能です。 「これからの発達障害の雇用環境はどうなる?」「自立にむけて必要な就労準備とは?」など、お子様の将来にかかわる最新情報を、当社代表の鈴木慶太がお話いたします。 講演終了後は、保護者様同士で情報交換をする座談会を企画しています。
発達障害の就労の最新事情 2018
このコーナーでは海外メディアが伝えた子どもの発達障害に関する注目記事をセレクション。解説を交えてお伝えします。今回は『絶えずスマホを見ている10代の子どもたちは、ADHDの可能性が高い?』、『英の胎児スキャニング研究は脳の発達に新たな光を当てる』の2本です。
Teens Who Are Constantly On Their Phones May Be At Risk of ADHD, Study Says
英タイムズ紙は、ソーシャルメディアの中で育つ子供たちには、その報いがあるかも知れない、と報じています。世界5大医学誌のひとつJAMAで発表された新たな調査は、ティーンエージャーのスクリーンの頻繁な使用とADHD(注意欠如多動症)に関連性を見出したそうです。
調査は2014年にカリフォルニアで10年生(日本の高校1年生)3000人に対して行われ、デジタルメディアの使用状況とADHDの兆候に関する自己診断の上、ADHDの兆候を示さなかった2600人の追跡調査を6か月ごとに行いました。最初の調査で一日のデジタルメディア活動(ソーシャルメディアのチェック、画像や動画のテキストメッセージやブラウジング)の平均は3.62 回でしたが、これより回数の高いグループが後にADHDと診断される確率は、低いグループより約10%高いことが判明。また、最初の調査で一日7回以上のテジタルメディア活動をしていたグループ114人が後にADHDと診断される割合は9.5%で、デジタルメディア活動を頻繁にしない、とした495人では4.6%となっています。
ただし、調査はスクリーンを見る行為がADHDを引き起こすことを証明している訳ではありません。もともとADHDの子どもはより頻繁にスマホを使う傾向があるかも知れず、後にADHDと診断されたグループには、既にあったADHDの兆候に気づいていなかっただけの子供が含まれるおそれもあり、さらに子育てなど他の要因がメディア使用頻度とADHD症状の両方に影響を与えている可能性も指摘されています。
それでも研究者たちは、頻繁にテキストメッセージを打つ行為は、注意の持続や情報の統合スキルの正常な発達を妨げる恐れがあると警告。2-5歳の子どもではスクリーンを見る時間を1日1時間以下に押さえ、学童期から上の年齢では、十分な運動、睡眠、勉強とスクリーンを見ない時間を子どもに与えることを勧めています。
UK foetal scanning study sheds new light on the developing brain
英ファイナンシャルタイムズは、妊娠中の胎児の脳がどのように発達するかを調査している研究者達が、出生前検査を変えるための研究において、胎児100体のスキャンを行ったことを報じています。
欧州研究評議会による資金提供を受けたヒューマン・コネクト・プロジェクトは、磁気共鳴画像法(MRI)を使用して、妊娠20週目からの脳機能のダイナミック・マップを作成しています。周産期イメージングを手掛けるマリー・ラザフォード教授は、「現在スキャンしているのは”普通”に発達している胎児ですが、同じメソッドを通常の超音波検査で問題が特定された胎児に用いたい。」と語ります。最初期の脳についての詳細な分析は、自閉症のような発達障害についての理解を促進することも期待されています。
記事はさらにロンドンのインペリアルとキングズ・カレッジ、そしてオックスフォード大学の物理学者と放射線医師チームが、胎児の脳の解剖学的構造と働きについての高解像度画像を撮影する技術を開発したことを伝えています。一度に1スライスのデータを得るのではなく、複数のスライスが同時に得られる”マルチバンド”イメージングを実装することで、胎児が動いて画像がボケることがなくなり、母親がスキャナに横たわる時間も短縮しました。胎児500体のスキャンを目指すそうです。
キングズ・カレッジのジョ・ハイナル教授は、このプログラムを産業規模で行われる初めての胎児イメージングであるとし、同校脳発達センターのディレクターであるデイヴィッド・エドワーズ氏は「これは物理学と工学が医学を進歩される素晴らしい例です。世界をリードするこのプログラムは、脳がどのように発達するかと発達を妨げる病気についての理解を促進し、女性と子どもたちの健康管理を向上させるでしょう。」と語りました。
ニュースレターの登録時や説明会の申込みフォームなどでお寄せいただいたご質問、ご意見にお答えします。
Q1. 高校1年生の発達障害の子供がおります。中学生の時に自閉症と診断されましたが、コミュニケーションができず、心身症により不登校が続いております。将来の自立にむけて、なにか手立てがないかと模索しておりますが、病院では、中高生になると、療育などの支援の場がないと言われ困っております。高校生が受けられる支援、発達障害児の将来の就学や、就労へのアドバイスが受けられる場所を探しております。
A. まず、保護者の方がこうして理解して動かれていることで、ご本人の居場所が確保されているのがなにより救いだと感じました。保護者の受容、すごく大切です。お近くの施設を探すには発達障害者支援センターがおすすめです(もしお近くであれば、ぜひTEENS へ)
ひとつ、障害特性の捉え方についてコメントさせてください。ASDの方は「コミュニケーションに障害がある」なんていわれたりもしますが、コミュニケーションというのは本来2人以上の人が行うものです。なので、”コミュニケーションがうまくいかない”という状況が起こったときにその責任を発達障害の方にだけに押し付けられるものではありません。 確かにASDの方はコミュニケーションの取り方が特異的な方が多いです。「幅広いなタイプの人と柔軟にコミュニケーションをとること」は苦手かもしれません。ですが、世界中のあらゆる人と滞りなく意思疎通ができる人がいるでしょうか? 日本にきたアメリカ人に「なんだ、日本語が話せないのか。コミュニケーション障害だな」なんて言うでしょうか? 英語を話せない側にだってコミュニケーションの壁を作る原因があるはずです。
同じように、発達障害の方がうまく意思疎通ができないとき、課題は発達障害当事者の側にだけあるのではありません。どうか「コミュニケーションができない」なんて仰らずに、ご本人の方法でコミュニケーションをとろうとしていること、その方法を理解できる人をご家族以外でも探していかれるといいですね。
Q2. 高校生の子どもをもつ親です。卒業後の進路について、進学でも就職でもよいので本人の好きなようにさせたいと思っているのですが「なんでもいい」の一点張りで話が進みません。母親の私が痺れをきらして、じゃあこの大学に行こうか、といって塾のパンフレットを見せていますがそれに対しては「めんどくさい」、と。自分の希望を言わず、促しにも応じず、イライラしてしまい毎日のように喧嘩になります。ゲームなど自分が好きなことだけ積極に動いており…。このままでは卒業後、なにもしていない状態になると焦っています。
A.今年、神戸大学と同志社大学の共同研究として自己決定が幸福感に大きな影響を与えるという結果が発表され話題となりました。確かに、発達障害の方のなかには、思いを形成したり言語化することが苦手な方も多いです。そんな中、親が一方的に進路を決定するのではなく、ご本人の気持ちを引き出そうと試行錯誤されている姿勢は素晴らしいと思います。
進路選択に関する希望は、「ゲームをしたい」というような生理的反応に近い要求とは異なります。「何かしたい」というニーズを、人に伝えるというのは案外難しいものです。まず、自分の中で「何がしたい」という①思いが形成され、②それをご本人が認識(自覚)し、③言語表現化する、という3つのプロセスが必要です。ご相談者様のお子様がどの時点で躓いているのかは定かではありませんが、①であればその思いを形成していくための知識や経験が必要となるでしょう。②や③に課題があるのであれば、引き出す側にカウンセリング技術があることが望まれます。 なお、だれもが前向きに、能動的に進路決定をしていくとは限らないということはおさえておきましょう。希望を持って自己決定していかれればそれは一般的には理想的かもしれませんが、消去法をもちいたり他者からのすすめに従いながら選択をしていく人もいます。”いかにも素敵”な感じではないかもしれませんが、否定される理由もないですよね。本人のニーズが芽吹くような働きかけを心掛けながらも、ニーズを言語化できないことで追いつめられることがないよう、ご本人にとって安心感と納得感のある形での決断ができるとよいでしょう。
この1か月のTEENSのイベントやニュースをまとめてご報告します。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます