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現在、東京に4カ所(新宿・御茶ノ水・三鷹・吉祥寺)、神奈川(横浜・川崎)に2カ所事業所があり、2月には関内に新たにオープンをする予定です。すべての事業所で、子どもたちの教育・支援を担うインターンを募集しています。
採用説明会では会社や業務内容の説明のほか、発達障害体験ゲーム、現インターンとの座談会などが行われます。毎年インターンから正社員への登用もあり、今年は8人を予定しています。詳しくは下記ウェブサイトをご覧ください。
このコーナーでは海外メディアが伝えた子どもの発達障害*に関する注目記事をセレクション。解説を交えてお伝えします。今回は『①自閉症の診断割合の上昇が止まる』、『②ADHD用に開発されたゲーム 今年の政府認証を目指して調査結果を公表』の2本です
Autism Rates Have Stabilized in U.S. Children
過去数十年にわたって上がり続けていた自閉スペクトラム症の診断割合が、ついに止まったのではないか、という米国の記事です。
それによると、2015年から2017年の3年間は2.2~2.6%。素人目には増えているように思えますが、統計学的には誤差の範囲内に収まっているということです。今回の記事によると、2.4%が子どもにおける自閉症の推定値となっています。
日本でもそうですが、米国では数年早く自閉スペクトラム症が一般に認知される言葉になりつつあり、2017年も多くのドラマが作られたり、報道がされたりするなど、多様なメディアに取り上げられていました。記事でも、実際の診断率が頭打ちになったというよりも、以前は診断される状態だった人が診断を受けなかったが、最近は診断されるようになったことが指摘されています。
Could this be the first prescription video game? New data show it helps kids with ADHD
このニュースレターでも何度か取り上げたことのある、米国にあるAkili社のゲーム。昨年12月に348人のADHDの子どもたち(8~12歳)にゲームを与えたところ、ADHDの特徴である注意力などの向上が統計的に見られたということです。
ただし、既にFDA承認が得られている多くのADHD治療薬やセラピーとの比較実験などは行われていないですし、今回効果が比較された「プラセボゲーム」がどういうゲームだったのかもわかりませんので、なんとも言い難い印象です。
しかし記事では、今まで治療という概念はお薬の存在が大きかったものの、昨年はアプリやセンサー付きの薬がFDA認証を受けるなど、ゲームというこれまで治療の手段としては用いられづらかったものも効果が実証されれば承認を得られる可能性があるのではとしています。
ニュースレターの登録時や説明会の申込みフォームなどでお寄せいただいたご質問、ご意見にお答えします。
Q1. 今年の4月から公立の中学に上がりましたが、学校での生活や学習、友達付き合いなどで発達障害を感じるような場面が顕在化してきました。どこに相談すればよいのか、どのように指導すればよいのか大変悩んでおります。できるだけ早い時期に(家内と共に)お話をお伺いしたいです。
A. 中学生になると相談できる場所って減りますよね。学校ではスクールカウンセラーや特別支援教育コーディネーターの配置などが大分充実してきましたが、機能していないところもまだまだあるのが現状です。
中学生というステージで周囲の大人が気をつけたいことをお伝えしておきます。今回の相談者様のお子様がまさにその段階なのだと思いますが、中学生に上がると他人との付き合い方が変わっていきます。同年代では男女の違いが明確になってきますし、同性同士も「友達100人」ではなくなりグループ化が進みます。年の離れた人とは緊張感が生まれ、甘える甘えられるの関係性は成立しづらくなるでしょう。発達障害のあるお子さんがゆっくりと成長していっていたとしても、周囲の変化とご本人の肉体的な成長は必ず起こるため、他者との関係性の変容はほぼ不可避だといえます。
そんな中で中学生を迎える発達障害のあるお子様の教育・支援をする際に意識していただきたいのは、「自己理解をすすめ受容を促す」ということです。特に中学生になったばかりですと告知も受けていない中で周囲とのずれに気づき始め、原因が分からずに悩むということが往々にしてあります。告知の検討も含め、自分自身の特性を前向きに捉えていくための働きかけをしていただけたらと思います。
TEENSに通うお子さんの告知と自己受容の状況をみると、おおむね良好です。診断を後ろ向きに捉える時期やタイミングはあることもありますが(これも成長のために必要な過程です)、長い目で見るとみなさん前向きに考えられているようです。これはやはり保護者の方の影響が大きいです。発達障害の魅力を知っている人たちのもとで暮らせるお子さんは、健康的な自尊心が養われていくのでしょう。年齢的に保護者の方が直接メッセージを伝えるのが効果的でないと思われる場合は、お子様が信用できる第三者とお子様の凸凹の魅力を考える機会を作ってあげてください。蛇足ですが、私は三度の飯より発達障害の方と過ごせる時間が好きです。
【参考】中学生の発達障害
Q2. 小6になる息子がADHDとASDの診断を受けています。来年から中学生になりますが、LDもあり漢字と図形問題が極端に苦手です。苦手だからとやらないのではなく少し違うアプローチで勉強したら、苦痛が和らぐのかもと思っていますが、学習に興味が持てず、体験に誘いましたが必要ないと断られてしまいました。今はまだそのタイミングでは無いのでしょうか?
A. モチベーションには「内発的動機づけ」と「外発的動機づけ」の二種類があります。学習で例えるならば前者は「知識をえられることが楽しいから勉強したい」という状態で、後者は「テストでいい点数をとったらお小遣いがもらえるから勉強したい」という状態です。物事にとりくむ動機がその活動自体にあるのか、取り組んだ結果外部から得られるメリットにあるのかで大別されます。
一般的には内発的動機づけの方がより深く長い効果がえられると言われています。では初めから全ての活動について内発的動機づけが期待できるかというと、そうはいかないというのはイメージしていただけると思います。勉強は既に苦手な活動に分類されているため、まずは内発的動機づけではなく外発的動機づけを狙うとよいでしょう。
注意しなければならないのは、学習自体への拒否感が強くなってしまっている現在、「勉強の苦手を和らげよう」という入り口から入らずに「興味がもてることをみつけよう」くらいの気持ちで始められるとよいでしょう。今回のご相談者様のお子様についていえば、漢字と図形は苦手とのことなので、別の、比較的好ましい分野から始めるのがおすすめです。いわゆる”勉強”でなくとも、学ぶことの意義を感じられるような活動機会に繋げてあげてください。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます