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過去2年大変好評を頂いているイベント『第3回 発達障害に理解のある学校 合同説明会』を今年も開催します。様々な形で発達障害*の学生の受け入れを行っている約25校がひらく個別のブースで、お子様の進学についてご相談いただけます。また、座談会や講演会を通して大学での合理的配慮の実際や、公立中学校における特性のあるお子さんへの支援の現状についてのお話を、第一線で活躍されている先生方から聞くことができます。
●個別相談(10:30~16:00) ご参加いただくすべての中学・高校の個別の相談ブースを設けます
●一斉説明(12:10~15:00の中で一学校30分ずつ) 一部学校について、個室を利用して一斉説明会を実施します。スケジュールにつきましては開催日が近づき次第公開いたします。
●大学座談会(11:00~12:00) 座談会形式で大学における特別支援教育についてお話しいただきます。
・明治学院大学 学生相談センター 戸谷祐二先生
・筑波大学 ダイバーシティ・アクセシビリティ・キャリアセンター 准教授 五味洋一 先生
・ADHD/ASD研究所 調布カウンセリングルーム 竹本幸子 先生
●講演(15:10~15:40)公立学校における特別支援の現状についてお話しいただきます。
・世田谷区立桜丘中学校長 西郷先生孝彦先生
このコーナーでは海外メディアが伝えた子どもの発達障害に関する注目記事をセレクション。解説を交えてお伝えします。今回は『①セサミストリートの新しいマペットには自閉症がある』、『②米連邦最高裁がコロラドの訴訟で学習障害*の生徒の権利を強化する判決を下す』の2本です。
Newest “Sesame Street” Muppet has autism: Meet Julia
アメリカCBSテレビのドキュメンタリー番組「60 Minites」が、日本でもおなじみの幼児教育番組「セサミストリート」で自閉症のある新キャラクター・ジュリアが登場するにあたって、撮影現場まで潜入して関係者に詳細に取材しています。番組の書き起こしと映像がウェブサイトにも掲載されていましたので今回取り上げました。
セサミストリートは1969年の放送開始以来、テレビで幼児教育を行うことができるか”実験”を行ってきました。ABCや123はもちろん、死や肌の色・障害・偏見、また離婚や従軍・犯罪での服役によって子供が片親であることについても扱ってきています。今回自閉症のあるキャラクターを登場させるにあたり、教育関係者や児童精神科医への広範な調査を行ったそうです。また自閉症団体と一緒に彼女にどんな特性を持たせるべきか、どうやって子供たちに分かりやすく自閉症を表現するべきか決めたとのことです。(ジュリアは挨拶されても返事をしなかったり、気持ちが安定しなくなると手をヒラヒラさせたり、サイレンが鳴ると両手で耳をふさいだりします。)
この番組中で最も印象に残ったのは、マペットの動きと声を担当するStacey Gordonは自閉症のある男の子の母親であり、その経験を活かしてジュリアを演じているという点です。セサミストリートに自閉症のある子どもが登場することはあなたにとってどんな意味があるかと問いかけられたところ、「私たちの子どもたちは社会の一員として重要な存在であるということです。ジュリアが番組に出てきて、全てのキャラクターが彼女に対して優しさや思いやりを持って接していて、そして彼女のことが好きだというのは、とても大きな意味があります。」とStaceyは答えています。
自閉症のある子は「違ったところはあるけれど一緒にいて楽しい友達の一人」というイメージをセサミストリートを通して持ってもらうことは、本人にも周りの子どもにも良い関係性を築くための大きなポジティブな効果があるのではないかと、この記事を読んで大変楽しみな気持ちになりました。日本での放送も是非行ってほしいですね。
Supreme Court bolsters rights of learning-disabled students in ruling on Colorado case
アメリカの連邦最高裁で、公立学校に通う学習障害の生徒に対してさらに高い水準での特別支援教育のプログラムを学校側が提供するよう求める判決が全会一致で下されたというニュースがありましたのでご紹介します。
コロラド州ダグラス郡に住むEndrewという自閉症とADHDのある男の子は、幼稚園から小学4年生まで公立学校に通って特別支援プログラムを受けていました。しかしなかなか彼の学習や行動上の問題が改善されないことから、両親は5年生からEndrewを自閉症教育に特化したデンバーの私立学校に通わせることにします。その後両親はコロラド州教育省に年間7万ドルの授業料を弁済するよう要求しました。(連邦法であるIDEA:個別障害者教育法では、「無料で適切な公教育」を障害のある生徒に提供することを求めています。)この申立が拒否されたため、彼の家族は公立学校のシステムがIDEAに定められた適切なレベルの教育をEndrewに提供できていなかったとしてダグラス郡教育学区を訴えました。
下級審ではEndrewに提供されていたプログラムでも連邦法が求めている教育的利益を満たしているとして学区側が勝訴しましたが、昨秋連邦最高裁での審議が決定し、今年1月に口頭弁論を開催しました。3月22日の判決で裁判長は「学区は特別な支援が必要な子どもに最低限の教育で間に合わせているだけでは不十分だ。学校のプログラムは生徒の障害を考慮したうえで彼らが成長できるように設計されている必要がある」と述べ、両親側が勝訴しました。一方で両親が要求していた、障害のある子どもたちの教育プログラムは障害のない子どもたちと「実質的に平等」になるように目標を設定すべきだという主張は退けました。
この判決は数百万人もの障害のあるアメリカの子どもたちに影響が及ぶものです。どの程度の成長を目指すべきかということは判決では触れられませんでしたが、単に障害に配慮するだけでなく、成長という成果が出る教育プログラムが今後は求められることになります。子どもたちやその親にとっては良いニュースであるのは間違いありません。一方で更に高い基準を設定することで予算が潤沢でない校区では費用の負担が重くなりすぎるのではという懸念もあるようです。
このコラムを書いている私は、親として日本の公立小学校の通級に子供を通わせた経験があり、このニュースでEndrewの両親が感じていたもどかしさには共感する部分もあります。実際には良い先生との出会いもあり通級はしてよかったと思っていますが、人頼みでなくプログラムレベルでの質の向上を日本でも進めていただきたいですし、そのために当社として公教育に対してできることも社内で考えていきたいと思っています。
ニュースレターの登録時や説明会の申込みフォームなどでお寄せいただいたご質問、ご意見にお答えします。
Q1. 4月から中学3年生になる男子の母親です。知的障害はないのですが、コミュニケーションに困難があり、普通高校への通学は難しいのではないかと思っています。ただ、本人は普通高校への進学を希望しており、どのような進路を選択すればいいかわかりません。今のままでは将来に希望が持てません。コミュニケーションスキルは向上するのでしょうか。
A. 「普通高校へ進学したい」と、自分の意思をもてていることがまず素晴らしいことだと思います。ただ現実的にベストな選択をお子様ご自身ができているとは限りませんので、第三者を交えつつ、ご本人の希望を尊重しつつ、多様な選択肢を提示して相談してあげてください。
本題の進学についてです。普通高校への進学を希望される場合は、(1)集団の中で過ごすことができるか、(2)学校生活の中で特別な配慮を必要としないか、(3)たとえ失敗があっても切り替えることができるかの3点をポイントに考えています。例え赤点ばかりでもあまり気にせずうまく周りに助けてもらいながら学校生活を送れるタイプの発達障害のお子様もいますし、逆に感覚過敏だったり環境や状況の変化に弱いタイプですと、どんなに学力が高くても支援と配慮が得られる環境の方が望ましいです。
コミュニケーションスキルについては、この年齢であれば十分成長の余地はあります。どの部分について躓いているのかによって支援・教育方法は変わるのでここでは割愛しますが、おしゃべり上手にすることではなく人を上手に頼るための質問・相談力を高めていかれるとようサポートできるとよいでしょう。
Q2. 来年度中学三年生です。IQが低いわけではなく、学習障がいも無さそうなのですが、テストで点数が取れません。広汎性発達障害の診断あり。単元毎には理解していますが、テストになると時間配分や忘れてしまうのか、雑になるのか不思議です。受験がありますので原因を突き止め対応をしないといけないと感じています。
A. まさに、仰る通りで理由を考えた方がよさそうです。実際のところは専門家にみてもらうことをお勧めしますが、今回は可能性のひとつについてお話します。
「IQが低いわけではない」と言っても、どこかの分野は強くどこかの分野が弱い、というのが発達障害の特徴です。全体のIQが高いとしても、「処理速度」とよばれるものごとを咀嚼して実行していくスピードがゆっくりな方がいます。そうすると自分のペースで取り組める範囲では順調に取り組めたとしても、時間制限のある状況下では自分の能力を十分に発揮できなくなります。
この場合の対応としては、解きやすい問題からこなしていく習慣をつける、学校に相談して試験時間をのばしてもらうような合理的配慮を求める、などが考えられます。何にせよご本人がさぼっているわけでは決してないので、誤解がないよう保護者の方も協力しながら学校の先生にお伝えしていくことも大切です。
Q3. 息子は4月~5年生で視覚認知障害による学習障害を持っております。コミュニケーションにも自信がないようです。現在他の放課後デイサービスを利用しているのですが内容にあまり納得できず遠くてもいいので別なところを考えるようになりました。
A. 放課後等デイサービスは現在全国で8400カ所以上あると言われています。多くの放デイは真剣に子どもたちと向き合って支援をしていますが、残念ながらDVDを見せるだけ、ドライブをするだけといった内容が不十分な事業所があるのも事実です。今年の4月から開設要件が厳格化されるので、あまりにおかしいところはなくなっていくことを期待したいですね。
ちなみに、放デイと一口に言っても内容は様々です。居場所重視型を行う事業所、学習支援やSSTプログラムを行う事業所、運動プログラムや遊びのプログラムを行う事業所などなど…行政窓口に頼りつつ、見学や体験を通してお子様に一番必要なサービスを選びましょう。
なお、お子様とご家族の健やかな日々や将来のための福祉サービスなので、利用すること自体が負担にならない程度の通所範囲で考えていただけるとよいかと思います。自力での通所が難しい場合は、ガイドヘルパーなどの送迎サービスを活用することもひとつの手段です。
Q4. 診断は出ています。これからかかる医療機関を探しています。(継続的にカウンセリングなどできるところ)提携先などございますでしょうか。
A. TEENSは渋谷に橋本クリニックと共同運営をしていますが、初診のご紹介などは現在のところ行っておりません。下記の当社ウェブサイトに医療機関情報を探すためのサイトのリンク集がございますので、そちらをご参考ください。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます
*学習障害は現在、DSM-5では限局性学習症/Specific Learning Disability、ICD-11では発達性学習症/Developmental Learning Disorderと言われます