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Kaien・TEENSスタッフが発達の凸凹が気になるお子さんのために150種類を超える職種を紹介する『発達が気になる子どものためのハローワーク』を合同出版より4月25日(火)に発売予定です。
昨年出版した『親子で理解する発達障害 進学・就労準備のススメ方』と合わせて、お子様の将来の就労イメージを描くためにご活用いただければ幸いです。
このコーナーでは海外メディアが伝えた子どもの発達障害*に関する注目記事をセレクション。解説を交えてお伝えします。今回は『①ADHDは「脳障害」であって単なる行儀の悪さではない』、『②乳児の脳スキャンから自閉症のリスクが分かる可能性』の2本です。
ADHD a ‘brain disorder’, not just bad behaviour: study
定型発達の人にくらべてADHDの人の脳の方がわずかに小さいという研究結果がThe Lancet Psychiatry誌に掲載されました。この研究ではADHDは単なる行儀や素行の悪さではなく、身体的な障害であると主張しています。オランダのラドバウド大学医療センターのMartine Hoogman氏らの研究によると、1,713人のADHDのある人と1,529人の定型発達の人の脳をMRI検査したところ、脳全体の大きさや、脳の7つの部位のうち5つでADHDの人の脳の方が数パーセント小さいことがわかったとのことです。これらの脳の成長が遅れている部位の中には感情を司る扁桃体も含まれています。脳の大きさの違いはごく小さく、これまでで最大規模の調査を行ったおかげで確認できたそうです。
このような脳の大きさの違いは他の精神障害、特に大うつ病の場合にも見られるそうで、疾患や障害によって脳の成長の遅れ方に特徴があるのかどうかも今後解明が待たれるポイントだと思います。また今回ADHDの人の脳に構造的な違いがあることがわかりましたが、この研究によってADHDの人に対しての「単なる性格の問題」「家庭での育て方の問題」といった偏見が減ってほしいという研究チームの代表の言葉に共感しました。
Baby brain scans may reveal autism risk: study
脳画像の話題が続きます。乳児の脳をスキャンすることによって自閉症の診断を予測し、行動療法での超早期介入によって症状を和らげることができるかもしれないという研究が科学誌Natureに掲載されました。以前からASDのある子どもの脳は定型発達の子どもより大きいことが分かっていましたが、その違いが出始めるのがいつごろからかはわかっていませんでした。今回の調査ではMRI画像でどの乳児の脳が通常よりも速いスピードで成長しているかを調べ、それがASDを暗に示す兆候であることがノースカロライナ大学のJoseph Piven氏らによって確認されました。
家系にASDの人がいるASDハイリスクの106人の乳児と、リスクの低い42人の乳児を調査したところ、月齢24か月の時にASDと診断された乳児は、月齢6~12か月の時に他の乳児よりも脳の皮質表面の成長が速かったことがわかりました。この研究チームでは診断予測のためのコンピューターアルゴリズムを開発し、乳児がASDと診断されるかどうか80%の正確性で予測できるとのことです。
行動面の特徴が現れる前、つまり現在の診断基準では診断できない2歳前からASDのリスクの大きい乳児を見つけ、脳が柔軟なうちに早期介入を行うことで環境に適応しやすくするというのが狙いのようです。日本での状況を踏まえると、2歳以降の早期介入も保険は基本的に効かずABAを提供している福祉事業所もごくごく少ないため高嶺の花であり、さらに乳児の頃から超早期介入をするためMRI検査をするというのはリスクの高い子どもだけに限定したとしてもあまり現実的でないと感じましたが、実際に超早期介入をした結果どの程度の改善があるかというのは是非知りたいところです。
ニュースレターの登録時や説明会の申込みフォームなどでお寄せいただいたご質問、ご意見にお答えします。
Q1. 中学生に進学するにあたり、気持ちを伝えられる場所を探しています。また、社会にでてからの道しるべをと考えてます。
A. 発達障害のお子様にとって、気持ちを伝えることはなかなか難しいことです。一つは気持ちというのはとらえどころがない見えないもので、見える化・構造化されていないと無いものになってしまう特性があると、自分の気持ですら把握が出来づらいというのが有ります。次に気持ちがある程度理解したとしても、それを言語化する、いわゆるコミュニケーション力が弱い場合があります。そして言語力が十分であったとしても、適切な場面で適切な人に伝えるという社会性の面が足りない場合もあります。ご質問では最後の点の能力が足りないと親御様として把握されていると理解しましたが、上述の通り、どのようなアプローチをしていくかはご本人にお会いする中でアセスメントさせて頂き、支援策を考えていきたいと思います。なおもちろんご本人の問題というよりも、周囲が刺々しくご本人が気持ちを共有したいと思える環境ではないかもしれませんし、気持ちを伝えることで自分が得をするという知識自体がまだ乏しいことも有ります。気持ちを伝える一つにしても様々に仮説を持って接していきたいと思います。
Q2. 4月から小学1年生になる息子ですが、自由時間をうまく過ごせず、地域の学童やキッズの説明会に参加して、少し厳しそうだと感じております。
A. 少し厳しそうというのは具体的にはどのようなことでしょうか?まっすぐお伝えしてしまいますと知的な面からまだ発達が遅れているということも考えられますし、ADHD的な特性から集団行動が苦手な面が強く出ていることも考えられます。また受け入れの機関も、いわゆる”健常児”のみを受け付けることを暗に示しているところなのか、スタッフと子どもの数の比が不十分だから厳しそうなのか、などで対応が異なるケースもあると思います。短い文章からの推測ですが、おそらく保育園では先生方のご理解があったのだと思いますが、小1からの放課後の預け先が理解があるところが見つからないということなのだと思います。当社はお預かりという機能よりも、付加価値を高めた放課後等デイサービスですので、ニーズにあった対応ができるかはわかりませんが、たしかにお近くのお預かり系の放課後等デイサービスを探されて、まずはご本人のペースに合った場を確保されることが大事かと思いました。
Q3. 4月から小学6年生になるの息子がいます。普通級に通っています。就学前から心療内科受診、療育等を継続的に受け、現在は投薬中。通級、プレイセラピーにも通い、医師や学校、親の対応等、相談しながら今日に至ります。しかしどうにも上手く本人の手助けにならず、情緒が安定しません。学習からの逃避、物の散らかし、トラブル。物事の見通しや段取り、運動機能の不得手からくる困難さに加え、その特性をクラスメイトからシビアにからかわれ、我慢したり、怒りが爆発したりでさらに周りから問題視される悪循環になっています。理解しようと頑張って下さる先生方や、優しく仲良くしてくれる数少ないお友達がいてくれるお陰で、辛うじて登校しています。本人は勉強も出来るようになりたいし、学校生活も楽しく送りたいのです。なんとかこの大切な時期に、明るく優しい本来の個性が育つ術がないか探す中でこちらのTEENSを知りました。
A. クラスメイトへのからかいからの回避をまず第一の目標にするかはわかりませんが、色々と問題が重なっているように思います。もちろんご本人の課題もあるかもしれませんが、周囲の状況も大きく絡んでいるのはわかります。まず周囲に働きかける部分とご本人が頑張っていく部分に大別すること。またご本人の課題はすべてを一度に取り組むのではなく幾つかのみを課題とし、しかも超スモールステップで取り組んでいくことが重要だと思います。いずれにせよ状態としては転校を考えたほうが良い状態かもしれません。小学校や中学校で転校となると私立でお金がかかりますし、また高校からは選択肢が増えるものの、中学校では選択肢が少ない状態ですので、どこまで現実的かはわかりませんが、大事なことはご本人のペースや情報処理量以上の状態だと推測されますので、まずはご本人がゆとりのある場所を探してあげることかと思います。場合によっては教育委員会や学校長がOKといえば、TEENSの日中支援(つまり放課後等デイサービスの日中利用)を検討いただければと思います。
【参考】 TEENSの日中支援(昼間の活動拠点をつくる『日中支援』 放課後等デイサービスのひとつです)
【参考】 (昨年度の開催ブログ 今年も第3回を計画中)第2回 発達障害に理解のある学校 合同説明会 実施!
Q4. 息子はアスペルガーで不安の強いタイプです。現在の療育はOT、臨床心理士に見ていただいています。御社の療育担当の方は専門的な資格等をお持ちなのでしょうか。
A. 当社には精神保健福祉士、作業療法士が多く、その他言語聴覚士などが働いています。ただし資格を保有しているのは20%程度です。発達障害の傾向のあるお子様のサポートの場合、複数の専門家が多角的な見地から検討する必要があるお子様もいますが、多くの場合、支援に資格が必ずしも必要ではないというのが当社の理解です。大原則として発達障害は心の病ではなく情報整理の混乱であり、心の病を得意とする臨床心理などの医療・福祉の専門的アプローチも重要ですが、しっかりとお子様の情報混乱の原因をアセスメントし、ご本人が楽しみながら取り組める支援をする想像力や知性が支援者側にあることがより重要だと思っています。もちろん資格保有者を排除するというわけではありません。しかし当社では、発達障害の人を社会(特に企業文化)に適応させるための支援は、医療福祉の”島”の中の知恵に加えて、外部の経験を積んだ人たちのノウハウも活用していくことが重要だと考えています。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます