これまで、私たちは東京大学の近藤武夫先生のご協力をいただきながら、放課後等デイサービス支援プログラムの整備を進めてまいりました。基本的なプログラムは整いつつある一方で、「これがティーンズの支援の王道だ」と自信を持って発信できる、象徴的な事例を共有したいという思いが高まってきました。
そこで、各事業所が「これはぜひ共有したい」と感じる事例を持ち寄り、互いに学び合いながら支援の質をさらに向上させる場として、「チャンピオンケース」企画をスタートすることとなりました。
今回の企画では、東京エリア、神奈川エリア、千葉・埼玉エリアの3つのエリアに分かれてチャンピオンケースが開催されました。それぞれのエリアで放課後等デイ3〜4事業所が集まり、各事業所が「チャンピオンケース」の候補を決定。その後、選出された代表者が集まって事例発表を行い、優秀なケースが選ばれ、エリアの「チャンピオン」が決定しました。
審査の視点は以下の通りです。
TEACCH(構造化)、ABA(応用行動分析)はスタッフブログにて紹介しています!
審査には、Kaienの就労移行支援事業所や自立訓練(生活訓練)の事業所のスタッフに加え、保護者や卒業生の方々にもご参加いただき、多角的な視点で評価を行いました。
今回はそんなチャンピオンケースの中から、東京エリアの様子をお届けします。
東京エリアでは、周囲とうまく付き合えず一人で過ごす時間が多くなっていたお子さんが、ティーンズでの支援を通じてどのような変化を遂げたか紹介されました。
きっかけはご本人の好きなカードゲームでした。同世代のお友達とカードゲームを通じて交流をするなかで、「相手の表情を見る」「ターン制で進める」などコミュニケーションにおいて必要なスキルを少しずつ身につけることができ、最近ではスタッフが間を取り持たなくてもご本人主体でお友達と遊べるようになってきています。ご本人のそのような変化もあり、周囲からご本人への認識も少しずつ変わりつつあります。
今回のケースではシステムズ・アプローチを支援方針としてきました。
システムズ・アプローチとは…個人の問題を、その人だけのものと捉えず、周囲の環境や相互作用を含めた「システム」として理解する心理療法の一つです。家族療法では、家族全体を一つのシステムとして捉え、相互作用を変えることで問題解決を図ります。
もともとは心理療法ではなく会社組織やシステム工学で使っていたことですが、教育や人間関係構築にも活用できることから様々なことに応用されています。
ご本人を取り巻く環境全体に働きかけて解決していくということは、一見当たり前のことかもしれませんが重要なことです。ご本人の周囲の環境のアセスメントやその関係者の考えを知ること、またいかにその方々と連携していけるかなどあらためて学ばせていただいた今回のチャンピオンケースでした。
今回のチャンピオンケースでは、各事業所で日々支援にあたっているスタッフ全員が、日頃の支援を振り返り、また他事業所のスタッフの創意工夫を学びつつ、ティーンズ全体として大切にしている価値観を共有する機会となりました。科学的な根拠をもとに、環境調整も含めた支援手法を多面的に検討してご本人の強みをを引き出すような支援を今後も続けていければと考えています。
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審査員(Kaienスタッフ)からのコメント
チャンピオンケースとなった事例では、ご本人がご家庭や学校などにおいて周りの人から難しい受け止めをされていたケースでしたが、ティーンズのスタッフがご本人の良いところや好きなところに着目し、働きかけで周りの認識を少しずつ良い方向に変えられ始めている。支援の内容についても、ターン制や相手の表情を見るといったところが分かりやすく、他のケースでもティーンズの支援として汎化できそうだった点を評価しています。