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当社著作本 好評発売中
思春期の発達障害の子どもたちが「正しく・フラットに発達障害について理解を深める」をコンセプトに、お子様向けのページとしてリニューアルしました。 これまでの発達障害 解説のためのサイトは親や支援者に向けて書かれることが多かったですが、発達障害のある中高生 ご本人目線でお読みいただけるような内容となっています。 告知を受けたお子様が、自分の特性について知りたい・考えたいと思ったときの材料になればうれしいです。
このコーナーでは海外メディアが伝えた子どもの発達障害に関する注目記事をセレクション。解説を交えてお伝えします。今回は『首相は自閉症と発言した議員が陳謝 それを受けた新聞記事』、『貧困・密集地域にADHDは多い?』の2本です。
Autism should be a general election issue – THE IRISH TIMES
Tolerance is increasing in many areas of Irish life, we need to embrace neuro-diversity too
どこの国でもいろいろな人はいるんだなと感じます。アイルランドで首相のことを侮辱するとき、「彼は自閉症だ」と発言した議員がいるとのこと。それについての記事です。
記事では「失言はあるもので、それが問題ではなく」と、日本のメディアとはだいぶ違う大人の対応を見せながらも、自閉症が理解されずこのような発言になっていると、自閉症スペクトラムの現状を丁寧に説明しています。
当社の支援の中でも周囲に心無い言葉をかけられたり、あるいは支援の外の生活で発達障害について馬鹿にしているのかな?というような発言・場面を見聞きすることがあります。そういうときもアイルランドの新聞の社説のような心意気で接していきたいなと思いました。
Higher rates of ADHD inside ‘poorer, denser’ harbour areas – MaltaToday
Researchers link higher rate to social and economic factors including higher population density, smaller homes, poverty and higher smoking rates
地中海に浮かぶ島口、マルタから。マルタの研究者によると、貧困地域、人口密集地域、喫煙が多い地域、それらが重なる港湾地帯にADHDの診断を受ける人が多いということが調査で明らかにされたという記事です。
まず読んだ時の感想が、「本当かな…」ということです。発達障害・心理系に限らず、様々な調査結果はあくまで可能性が提示されるだけで、後年に行われた調査結果と一致することばかりではありません。むしろ矛盾する結果が出ることもあるほどです。
この記事のタイトルにはいろいろと誤解を招くことがあることが記事を読み進めるとわかり、港湾地域でない地域(経済的に豊かな地域が多い)は公立診療所を訪れておらず、民間クリニックで診断を受けているかもしれない。そしてそれは統計に反映されていない(ADHDの診断数が公的病院・機関のみで計測されている)ため、港湾地域のADHDが多く出がちだったのではとか、一方で経済的に豊かな地域だけれどもADHDの比率が高いところは積極的に公的機関を使うほどADHDへの感度が高いのではないか、など矛盾したり、論拠が薄かったりという分析だということがわかります。
発達障害が一般的になるにしたがって、様々な調査結果が出てきます。タイトルや要旨だけに惑わされず、また他の研究・調査でも同じ結果がでているかどうかも確認し、情報リテラシーを高めていきたいところです。
ニュースレターの登録時や説明会の申込みフォームなどでお寄せいただいたご質問、ご意見にお答えします。
Q. 自己肯定感を高めるのにどのようにされていますか
A. こちらの疑問を抱かれる親御さんの元で育っていたら中長期的には心配なさそうだなあ、というのが最初の感想でした。大事ですよね、自己肯定感。自分を前向きに受け止めるスキルというのは、とても大切です。
TEENSではどう考えているか?まず、段階を見極めます。
ステップ1 安心/信頼のために ゆったり・ウキウキ・ワクワク体験
ステップ2 可能性を引き出す 成功/達成体験・上手な失敗体験
ステップ1 安心・信頼のためのゆったり・ウキウキ・ワクワク体験
例えば、いじめを受けて不登校になっていて落ち込み気味の子…。心の健康を取り戻す段階です。
まずは安心して過ごせる場、そっと信頼を寄せられる人と出会いましょう。そして少しでも心ときめくことに触れる機会を作りましょう。
「これは楽しいな」「この人は好きだな」そういう時間がとても大切です。
ステップ2 可能性を引き出す成功/達成体験・上手な失敗体験
ある程度の心の健康が整っている子は、成長に繋がるような体験をしましょう。
ここで注意したいのは、大人がお膳立てした、大人が理想とする”できたね体験”だけではあまり意味はないということです。
お子さんが「したい」と思えること、頑張れば「できる」こと、周囲の人も期待を寄せている「すべき」こと、この三つが重なる部分で、お子さん自身が何を目指してどう活動するのか自己決定し、自己実現していくための伴走をしていきます。
具体的には?例えばTEENSで実践しているのは「XX高校に行きたいからテストでXX点取る!」という自己実現のサポートや、「将来なにがしたいか分からないから、イメージをつけるためにお仕事を体験してみる!」という自己決定のための下ごしらえなんかをしています。
「失敗体験を避ける」という考えのもと、発達障害の子たちには、この自己決定のプロセスが奪われがちです。一方で、自分を大事に思う気持ちを育むには、自分の人生が自分のものであるという当事者意識が不可欠だと考えています。参考になれば幸いです。
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます