発達障害*のある方には、『特性に合わせた特別な支援を受けられる学校・学級』が進路の選択肢としてプラスされます。
こちらのページでは自分の可能性を引き出すためにはどんな環境を選ぶといいのか? 解説をしていきます。
選択肢は大きく分けて3つ。「公立」「私立」「特別支援学校」です。
小学校は入学前に健康診断を受けて、基本的にはその結果を見ながら保護者と教育委員会の人が相談をして進路を選びます
ただし、6年間必ずしも同じ環境にいなければいけないわけではなく、もし今あなたがいる教室が自分には合っていないと感じたら、自分にとって学びやすい環境を選び直すこともできます。
今の環境が合わない!と感じることがもしあれば、まずは親御さんや先生に相談をしてみましょう。
中学校にあがるときには、小学校入学のときよりも判断する力が成長しているはずです。小学6年生になったら周囲の人のアドバイスも聞きながら、候補となっている学校・教室を実際に見学しに行き、イメージを膨らませてから選択をしましょう。
なお、地域の公立校であればそのまま入学できますが、私立の場合は受験をする必要があります。
公立校(通常学級) | ひとつのクラスにひとりの先生がいるスタンダードなクラス。人数が多いので自分のペースでは過ごしにくいこともありますが、「通級」という特別授業の制度を使うこともできます。 |
公立校(支援学級) | 少人数のクラス。通常級とは別のカリキュラムを、個別のペースで進めていきます。通常級で過ごしたいときには「交流級」に行くこともできます。 |
私立校 | 個性があったり特別なサポートをしている学校があります。ただし、入学するために受験が必要だったり、学費が高かったりするため注意が必要です。 |
特別支援学校 | 障害のある子どもが専門的なサポートを受けながら学ぶことのできる学校です。誰でも入れるわけではなく、入学には様々な条件があります。 |
高校以降は選択肢が一気に広がります。学習環境が選べる一方で、入学にあたっては試験を受けて合格をする必要があります。
どんな環境で過ごしたいのか、将来に向けてどんな準備をしていくのがいいのか、中学2年生くらいから自分自身の思いを整理し始め、積極的に見学・体験授業に参加しながら進路について考えていきましょう。
『勉強したいことが明確にある!』 内容から選ぶ | |
普通科 | 一番スタンダードな科。国語・地理歴史・公民・数学・理科・英語など…中学と同じような教科を主に履修します。 |
専門学科 | 農業、工業、商業体育、音楽、美術、外国語など…特定の分野をより深く学ぶことができる学科です。 |
総合学科 | 幅広い分野の基礎を学べるのは普通科、特定の分野に特化しているのは専門学科。それらに対し、総合学科では2種類の教育のどちらの科目からも選択して履修することができます。 |
高等専門学校 | 5年間かけて機械系、電気系、情報系などの専門科目と一般科目をバランスよく学びながら、技術者に必要な豊かな教養と専門知識を身につけることができます。 |
高等専修学校 | 工業、農業、医療、教育・社会福祉など…バラエティーに富んだ職業教育を行っている学校です。不登校生の生徒や高等学校中途退学者の受け入れを積極的に行うなどの特色をもつ学校も多いです。 |
特別支援学校 | 障害への配慮を受けながら、学習や就職への手厚い支援を受けることのできる学校です。卒業後の就職にむけて、職業訓練や実習に積極的に取り組む学校が多いです。入学条件は学校によって異なり、障害者手帳が必ずしも必要でない学校もあります。また、高校卒業資格は得られませんが大学への受験資格は得られます。 |
『自分のペースで通学したい!』 通い方から選ぶ | |
全日制 | 基本的には3年間、週5~6日学校に通い卒業を目指します。 |
定時制 | 3~4年かけて基本的には毎日登校をします。学校によって昼間、夜間と学ぶ時間が設定されており、1日の学習時間は4時間程度と短めなのが特徴です。 |
通信制 | 基本的には学校へ通学せずに自宅で学習を進めていきます。日々、郵送やウェブ経由で「レポート」を提出して、決められた日数分「スクーリング(面接指導)」を受けて、最終的に「テスト」を受けます。 |
サポート校 | 通信制高校に通う生徒に対して、3年間で卒業ができるよう単位取得・進級などに必要とされる勉強や精神面でのサポートをする塾のような存在です。通信制に通いたいけど、ひとりでは課題提出ができないかも…という方はおすすめ。登校日数などは選べる場合が多いです。 |
『クラスの形態にこだわりたい!』 授業形態から選ぶ | |
クラス制 | 多くの全日制高校や定時制高校で導入されている制度です。1年ごとに必要な単位数(受ける授業の数)が決まっており、1年間で必要な単位数が取得できれば進級できますが、単位数が足りなければ留年となります。 |
単位制 | 通信制高校や一部の全日制高校、定時制高校で導入されている制度です。「必須科目を含む74単位以上を取得」し、3年数以上を通えば卒業することができます。学年にとらわれず自分のペースで科目を履修できるのが特徴です。 |
#番外編 | |
公立 通級 | 【全国】公立高校で大部分の授業を通常の学級で受けながら、別の教室で勉強や生活面に関する個別の指導を受けられます。2018年からスタートした比較的新しい制度のため、設置している学校はまだ少ないです。 |
チャレンジスクール | 【東京都】定時制。不登校経験者・他校中退者などを主なターゲットとする総合学科の高校。内申書不要・単位制による幅広い選択可能科目・カウンセリング体制の充実しています。 |
エンカレッジスクール | 【東京都】全日制。「可能性を持ちながらも力を発揮できない状態の生徒」を積極的に受け入れ支援します。入学時の学力審査なし、定期考査なし、習熟度別学習と少人数授業、週1の体験的学習の実施などが特徴。発達障害や学習障害*があり特別な配慮が必要な生徒の学び直しにも力を入れています。 |
クリエイティブスクール | 【神奈川・大阪】多様なニーズを持つ生徒が目的意識を持って学ぶことができるようきめ細かな指導を行います。形態、内容などは自治体・学校によって異なります。 |
高校卒業後は、「進学」「働く」「働く準備」から進路を選ぶ場合が多いです。
社会にでるための大事な分岐点です。高校2年生くらいから見学や実習、体験などに積極的に参加して準備をしていきましょう。
進学 | |
大学 | 大学は「学問」(研究)をするところです。講義内容や講義形態は学校によって多種多様で、自分の興味関心に合わせて学部や学科を選択することができます。 |
専門学校 | 職業や生活に必要な能力を育成することを目的とした学校で、職業につくために特化した実習中心のカリキュラムが特長です。修業年限は1年以上で学校によって異なり、資格取得などに強い学校も多いです。 |
留学 | 海外の学校に通って勉強をすることです。3ヶ月以内を短期留学、それ以上を長期留学と呼びます。 |
働く | |
一般雇用 | 企業の応募条件さえ満たせば誰でも応募できる雇用形態。自分のスキルや強みに焦点を当てて仕事を探す方法(凸を活かす)だと言えます。 |
障害者雇用 | 障害者手帳を所有をしている人向けの雇用形態。障害への配慮を優先させて仕事を選ぶ方法(凹を補う)だと言えます。週20時間や1日6時間等短時間労働もあり。 |
福祉就労 | 「就労継続支援A型事業」と「就労継続支援B型事業」の2種類があります。A型事業には雇用契約があって、毎月定められた賃金が支払われますが、B型事業には雇用契約はなく、行った作業に対する工賃だけが支払われます。 |
起業 | 自分で新しく事業を開始することです。15歳以上であれば資本金1円から起業することはできますが、知力・体力・情熱・ときの運が試されます。 |
フリーランス | 会社や組織に所属することなく、個人で仕事を請け負う働き方のことです。エンジニア、デザイナー、ライターなどが代表的です。非常に高いスキルが求められる働き方だといえます。 |
働く準備 | |
生活訓練 | 障害のある方が「働く」準備の前に「生活する」準備をしたいときに利用できる福祉サービス。衣食住、お金の遣い方など…大人として自立していくための練習を最大2年かけて行います。 |
就労移行支援 | 障害のある方が「働く」準備をしたいときに利用できる福祉サービス。学校のように通いながら就職に向けたサポートを受けることができ、職業訓練や就活のサポートを最大2年受けることができます。 |
障害者職業能力開発校 | 障害のある方が就業に必要なスキルを習得することができる学校。例えばIT分野であれば、CAD技術、Webデザインなど、事務職分野ではOA事務、経営事務、医療事務などを学べるコースがある。期間はコースにより異なり3か月から2年が目安。 |
サポステ | 働くことに悩みを抱えている15歳~49歳までの若者を就労に向けたサポートする支援機関。就労準備をしたいけれど何をどうしてよいやら全くわからない!という方も気軽に相談することができます。 |
★【Will】自分がしたいことを考えよう
どんなことをしているときが楽しいですか?どんな生活を送りたいと思っていますか?逆に、絶対にしたくない、なりたくないものはありますか?
自分の『本当にしたいこと』をはっきりさせるのは大人でも難しいです。自分自身に以下のような質問をしてみて、その理由も掘り下げていくと自分の中で大切にしたいことを見つけることができるかもしれません。
★【Can】自分ができることを確かめよう
『できること』は自分のものさしではなく、他の人と同じものさしを使って測っていく必要があります。
『したいこと』同様、『できること』も自分自身では見つけることはなかなか難しいです。周囲の人にヒアリングをしてみたり、以下のようなものを使って客観的に測っていけるとよいでしょう。
■学力
ー 定期テスト
ー 成績表
ー 模試
■能力・資質
ー 知能検査(ウェクスラー式知能検査 など)
ー 各種アセスメント(LDのためのアセスメント、職業能力を測るアセスメント など)
ー 自己分析ツール(ストレングスファインダー、VIA-IS、グッドポイント診断 など)
★【Should】周りの人に相談しよう
親御さんや先生など、『周りの人から求められていること』に耳を傾けることも大切です。
大人はあなたよりもたくさんの経験をしている分、進路選択に関して様々な冷静に判断ができることもあります。意見を聞いて進路選択の参考にしましょう。
一方で、大人の見えないところであなたがたくさん考えたり悩んだりしながら様々な経験を積んでいることは、あまり上手に伝わっていないこともあります。
特に、発達障害のある人の物事の見え方・捉え方、表現の仕方が特異なために、周囲の人があなたの思いや考えを正しく理解されにくいこともあるでしょう。
親御さんや先生と意見がわかれてしまったときには、「理解してもらえない」と諦めるのではなく、別の立場の人に仲介役をお願いしながら意見のすり合わせができるとよいでしょう。
選択肢の洗い出しと同時に、進路決定までのスケジュールをたてましょう。
まずはざっくりと月単位で何をするのか決め、少しずつ週単位、日単位…と、具体的に定めていきましょう。
進路の候補が決まったら、実現に向けて準備をしましょう。
特に、入学試験や入社試験が必要な場合は計画的に備えていく必要があります。自分ひとりの力でこなしていくことはなかなか難しいため、塾や支援機関などを頼りながら進められるとよいでしょう。
なお、受験の際には特性に合わせた合理的配慮が申請できる可能性があります。詳しくは以下をご覧ください。
https://www.teensmoon.com/chart/%e3%80%90%e5%9b%b3%e8%a1%a8%e3%81%a7%e3%82%8f%e3%81%8b%e3%82%8b%ef%bc%81%e3%80%91%e7%99%ba%e9%81%94%e9%9a%9c%e5%ae%b3%e3%81%a8%e9%ab%98%e6%a0%a1%e5%8f%97%e9%a8%93/
*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます
*学習障害は現在、DSM-5では限局性学習症/Specific Learning Disability、ICD-11では発達性学習症/Developmental Learning Disorderと言われます