発達障害のあるお子様向け キャリアデザイン教育
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学習障害*の方のためのVR SST徹底レビュー | “羨ましい”特別支援を目指してソーシャルスキルトレーニングVR emou(エモウ)をTEENSで導入予定

2019年3月22日

TEENSの飯島です。本日は放課後等デイサービスTEENSが新たに導入予定のVRを活用したSST<emou>の体験レポートです。

☞ソーシャルスキルトレーニングVR emou(エモウ) https://emou.jp/

ソーシャルスキルトレーニングVR emou(エモウ)って?

こちら動画を見ていただくのが一番早いです。

特徴をまとめると

とにかくリアル。ストーリーに没入できる

…絵カードやプリントを使ったSST、ロープレとの最大の違いはここ。登場人物の表情、目線、間合いなど…文字やイラストでは伝わらないニュアンスが再現され、参加者全員で共有できる。

視線などを記録・数値化できる

…「話している人の方を見ましょう」というのは知識としてはわかっていても、本当にできているかを練習したり確認するのは通常なかなか難しいですが、VRだと視線を記録したり、再現したり、得点化することができる。

支援者の力量に左右されない

…SSTのシチュエーションを参加者全員に正確にイメージしてもらうのはとても難しい。そんな良い支援者に出会えるか?という賭けをしなくても、再現性をもった支援を受けることができる。

【レビュー】体験実施をしてみて 良かった点・改善点

3/8(金)と3/10(日)に当社ご利用者様に体験いただきました。以下、良かった点/悪かった点を率直にレビューしていきます。

【良かった点】援助要請がしにくいような状況をリアルに体験できる

『休み時間。周りの子たちは楽しそうにおしゃべりをしています。自分の席にいた<僕>はなんだか体調が悪くなってきました。なんだか熱もあるみたいです。
そんなとき、先生が教室に入ってきて言いました。
先生「みんなが楽しみにしているテストの時間だ。席につけ」
友達「先生、俺おなか痛いんですけど~!」
先生「こら、ふざけるんじゃない!じゃあみんな始めるぞ~」
こんな時、あなたはどうしますか?』

このSSTのテーマは「困っているときに援助要請ができるか?」です。旧来のSSTにはこういった内容のものがたくさんありました。そこで、子どもたちはロールプレイをしてみたりディスカッションしながら回答を導いていきます。実際のところ、上にあったような文章やイラストだけで表現されていれば、大概の子は「先生に体調不良を伝える」という模範解答がでだすことができます。

では、VRの場合だと何が違うか。

周りの子のふざけた感じ、授業がもう始まるのだという雰囲気…リアルな「言い出しにくい」状況が再現されます。

実際、体験会では多くの子が「黙ってそのままテストを受ける」という選択をしました。「ふざけていると思われたくなくて、言い出しづらかった」とのこと。でも、現実ってそうだと思うのです。

VRのSSTでは、「プリントに正解がかけたね!OK、OK」とはならず、そのシチュエーションにおける心理状態を再現することができます。そのうえで、じゃあどうしようか?というリアルな処世術を考えることができるのが良い所ですね。行動/判断の般化が期待できます。

【良かった点】クラスにいる“苦手な子”の気持ちも考える機会ができた

ここが一番よかったです。

友達「先生、俺おなか痛いんですけど~!」

クラスの中心的な人物。明るいおふざけキャラですね。これに対し子どもたちは「クラスにこういう子いるよね~」「いっつもふざけてて本当に嫌だ」「この子のせいで言い出せなかった」という反応…。まあそうですよね。

ここで、「友達は、あなたが体調が悪いのは知っていたのかな?」と問いかけたところ、なんと子どもたちは「絶対知っているに決まってる」というお返事でした。まさにリアル版サリーとアン課題…!

「サリー と アン 4 歳」の画像検索結果

※自閉症児が誤答しやすいと言われている「サリーとアン」の課題。実際はこの程度の情報量であれば多くの子が理解できます。

そこで、スタッフがモニターに映像を映しだし、<僕>が体調不良であることを先生に告げたときの友達の言動・表情をみんなで一緒に確認。

「あ、心配してくれてる」

この振り返りが!現実世界だとできない!通常のSSTだと再現されない!

ここまできて、初めて「じゃあなんでこの子は、体調が悪いなんて言ったのかな?」というお話ができます。悪気があったわけではない。確かに不謹慎かもしれないが、現実世界ではこれくらいのジョークはありえる。このタイミングであなたが体調不良だと伝えたら、確かに疑われる可能性もある。でも真剣に、もう一度伝えてみよう。伝わるかもしれないし、伝わらないかもしれない。じゃあ伝わらなかったら…。これぐらい、現実に即した話ができるようになります。

他者視点で考える、ってとても難しいことです。でも着目するポイントをひとつひとつ紐解いていけば、発達障害*の子どもたちにもきちんと伝わります。

【良かった点】 失敗しても怖くない 繰り返しの練習ができる

大人向けのプログラムに、3人の面接官からの質問に答えるという内容のものがあります。

大人だからそこまで没入しないかなあ、と正直思っていましたが、そんなことは全くなく。手を震わせながら本当に緊張したり、本当の面接さながらの姿勢・声量で答える方ばかり。それくらいVRのSSTはリアルで、そして発達障害の人たちは目の前のことを真剣に捉える才能があります。

「これなら50回、100回練習できる。そうしたら面接もできるようになるかもしれない」とのこと。

確かに…。面接練習を誰かに100回お願いするのは難しいでしょう。最初は人の目も気になります。でも一人でぶつぶつ呟いていても臨場感がありません。失敗が怖くない、何回でもできる。これってすごい魅力です。

【良かった点】 成功も疑似体験できる

どのプログラムも、最後は成功体験で終わります。

泣けたのが、「お楽しみ給食のメニュー決め」というストーリーのプログラム。こちらは複数人と話している際の視線の向け方を測るものです。途中、<僕>が意見を求められ、選択式で回答すると、みんなに「い~ね~それ!」と言われるというお話。

そこで小学生の子がボソッと、「僕の意見、いいねなんて、初めていわれた」

療育的な場での成功ではなく、教室での成功体験。大人から褒められるのではなく、同世代の子に認められる経験。なかなか味わえない子も多いと思います。VRでできる行動選択の幅は限られていますが、それでも自分がした意思決定が評価されるというプラスの経験を子どもたちに積んでもらえる機会にもなりそうです。

【改善点】指導者向けのあんちょこは改善の余地あり

唯一にして最大ですが…。SST VRは主題以外にも学べるポイントが盛りだくさんなのですが、問題は指導者がそれに気づくことができるか。現在簡単なあんちょこはありますが、より深い学びを提供するためにはもう少し詳細で、でも読み込むのが難しくないような補助教材があると有難いです。

※このあたり、6月くらいまでに改善予定とのことです。期待して待ちます。

“羨ましい” 特別支援を目指す

特別支援のイメージって、世間的には良いものだとは決して言えないと思います。残念ながら、劣等感をもちながら、つまらないと感じながら取り組んでいる子も少なくありません。あるいは、子どもたちがそういった心理状態になることを恐れて、本当は手厚い支援体制の整った環境を選んだほうが良いけれど、通常の学級を選ぶ親御さんも多いです。

「VRはワクワクする経験や学びをどこにでも持ち運ぶことができる」と、開発元のJollygood社の方がおっしゃっていました。

活動機会が限定されがちな発達障害の子どもたちに、たくさんの経験を。習い事はVR!次の授業はVR!なんて、周りの子たちが羨ましくなるような、ちょっと自慢してしまいたくなるような、そんな風に療育や特別支援の形が変わっていく可能性を感じています。

そんなわけで、まだまだ発展途上のプログラムではあると思いますが、放課後等デイサービスTEENSでは4月から新宿・川崎の拠点で先行導入を予定。特別支援の未来を、私たちスタッフもお子さんたちもと一緒に考え、作っていきたいと思います。

▶TEENSのご利用を希望される方は

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

*学習障害は現在、DSM-5では限局性学習症/Specific Learning Disability、ICD-11では発達性学習症/Developmental Learning Disorderと言われます

 

*発達障害は現在、DSM-5では神経発達症、ICD-11では神経発達症群と言われます

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